2004年12月4日に第129回研究会を実施した。

(1)勉強会

①「ショットブラスト工程のパラメータ設計によるショットピーニング化(いすゞ自動車(株) 衛藤洋仁,渡邉泰行)」((株)神戸製鋼所 原宣宏):ショットブラストとショットピーニングを同時に評価するため,評価用薄板が受けるエネルギー(薄板の変形量:アークハイト)を特性値として21世紀型標準SN比を用いて解析した事例。この中で交互作用が心配な制御因子Eについて,確認試験で最適条件以外に他の2水準をふって比較条件とし,その変化から制御因子Eの最適水準の正しさを確認している。この方法は,最適条件の確認にはなるが再現性の確保ができたとはいえないのではないか等について議論を行った。

②「テレメータリングによるレース車両の異常検出システムの構築(日産自動車(株) 栗原憲二,大西幸一,進士守)」(ティ・ティ・コンサルタント 竹ケ鼻俊夫):実際のレース競技中のデータを基にMT法の単位空間を作成することで車両異常を検出するシステムを成立させることを確認した事例。この事例を参考にしてエンジン状態のモニターをMT法を用いて簡素化できないかについて議論が行われた。

(2)グループ検討会:4グループに分かれてグループ毎に持ち寄ったテーマを討議した。その中から下記の3テーマを選んで全体討議を行った。

「三層アルミパイプの曲げ加工時の座屈防止について」(積水化学工業(株) 佐藤聡):アルミと樹脂のパイプをR曲げするとき,曲げRの内側に座屈部が発生することがある。それを改善するための評価特性について①座屈の発生数,②パイプの肉厚変化,③変形による材質の硬化などの意見が議論された。

「トナープラントの粉砕・分級行程の条件見直しによる収率向上の検討」(シャープ(株) 林勇治):粉砕エネルギーを変えて粒径分布を評価する案が検討された。テストプラントで制御因子の水準を決めて再現性を確認してからトナープラントで確認した方が効率的であるとのアドバイスが行われた。

「改札機のベルト汚染等によるベルト外れの問題解決」(オムロン(株) 藤本貴之):ベルト外れを解決するための方法が検討され,ベルトの並進方向速度に対するベルトのズレ量で評価する方法がアドバイスされた。

((株)ヤンマー農機 残間茂雄 記)

 

11月6日に田口玄一氏を招聘して第128回研究会を実施した。

(1)田口氏の講演「マハラノビス-タグチシステム」:「マハラノビスタグチシステム 目的と手法」(田口玄一著 (株)オーケン)を資料としてTS法とMTA法との違い,使い方,計算手順について解説された。TS法は推定,予測の方法であり,中央に単位空間を作る。正常かどうかの判断(管理の世界)はTS法ではない。単位空間の取り方は重要であり,単位空間外はすべて信号である。マハラノビス距離ではなく,直交変数を用いて真値を推定し,総合推定値を計算する。

(2)事例相談

①「記録紙の分離条件の最適化」(村田機械(株) 池田保):ミスフィード,ダブルフィードのない給紙機構のパラメータ設計。紙を送るのに要する時間を評価したが,再現性が悪い。本件はデータの解析方法を変えるべきであるとして,計測特性,ノイズの入れ方,データの解析方法についてのアドバイスがあった。

②「(デジタルデータの)標準SN比を用いた検査の判定精度評価」((株)シマノ 太田勝之):損失コストを考慮した検査システム。部品の検査者の優劣をSN比で求めた事例の相談。測定値が官能値ならこの方法で良いだろうが,計量値のある検査データを使った評価は問題である。その場合は真値と計量値とのSN比で評価すれば良いなどのアドバイスがあった。また,官能評価の順位付けの方法についてアドバイスが行われた。

③「プレスマスクの転写性」(松下電器産業(株) 山口新吾):マスクのプレス成形の安定性評価。目標寸法に対する成形寸法の転写性の標準SN比で評価した。測定点が273箇所あるので測定点を減らしたいとの相談であった。データの取り方,そのための実験方法,どのようにして測定点を減らすべきか等についてアドバイスがあった。

(コニカミノルタオプト(株) 平野雅康 記)

 

10月1日に第127回研究会を「第2回関西品質工学研究会シンポジウム」として66名が参加して実施した。

(1)講演「経営/マネジメントと機能性評価“もし,自動車用レーダー開発にタグチメソッドを活用していたら”」(ティ・ティ・コンサルタント 竹ヶ鼻俊夫):20数年前,自動車を取り巻く環境が大きく変化し,電子技術を導入しようとする気運が高まり,自動車用電子機器の開発に注力していたが,信頼度を評価することは困難を極めた。また,軍用機器の開発に従事していた折は,軍用機器としての豊富で充実した信頼度データをもとにSQCをベースにした信頼性工学により市場での信頼度を予測していたが,時代とともに再発防止を主とした信頼性向上では市場の要求についていけず,未然防止への発想の転換が必要となり,品質工学との出会いにより,再発防止から未然防止へのステップアップができたと考えている。このような時期に自動車の安全対策として衝突防止レーダーの開発に係わることとなり,開発時に苦労した話を披露された。この衝突防止レーダー開発に品質工学を活用していたらどんなことをしていただろうかと振り返ってL18実験を行った場合,MT法を活用した場合等の提示があった。品質工学を使っていれば,評価時間の短縮に大きい効果が出たのではないとの議論が行われた。

(2) 事例発表

① 「電子写真現像剤の評価法の開発」(富士ゼロックス 櫻井英二):複写機,レーザープリンターの現像剤開発の期間短縮に標準SN比と動的機能窓法の考えを取り入れた新しい評価方法,21世紀型動的機能窓法を考案し,その妥当性を検証した。評価工数は1/16になり,歩留まり,市場品質共に良好であることが確認できている。どのような過程で21世紀型動的機能窓法にたどり着いたのか,帯電量を安定させればすべて良くなるのではないかとの議論が行われた。

② 「計算シミュレーションによる光学部品の許容差設計」(日立製作所 日座和典):液晶プロジェクタ等に使用される光学システムの中にある光学部品の公差を適正化するため,光学システムの中で,設計変更が可能な要因を取上げて,どの公差要因が目的品質に影響するのかを調査し,影響しない公差要因の公差を緩めることでコスト低減を見込む計算シミュレーションによる実験を行った。シミュレーションによる実験は公差の両端にコントロールした水準設定が可能となるのが一番大きいメリットである。この事例は,感度分析による設計変更の可否検討というべきもので,品質工学でいう許容差設計ではないとの指摘が行われて,許容差設計についての簡単な解説が行われた。

③ 「標準SN比と2段階設計による光ディスク開発」および「世界初ROM・RAM同期記録再生可能な光ディスク媒体の実現」(富士通 細川哲夫):1番目の事例ではマーク長さの安定性と目標でのチューニングを分離した2段階設計により光ディスクの開発を行った結果,良好な再現性が得られた。実験・解析を含めて,1週間程度で終了した。2番目の事例は事業所で取上げられなかったテーマであったが,新技術創造プロジェクトで取り上げられ,開発の機会を得て,変られるものは全部変えてみようというスタンスで実験を行った結果,約5か月で最適化ができ,特許を出願した。新技術開発に品質工学を適用したよい事例である。1番目の事例で,標準SN比の計算が旧式の計算式になっているので,新方式で計算し直すべきとの指摘が行われた。

④ 「MT法による不良工程の特定」(セイコーエプソン 南百瀬勇):半導体は数百ステップにおよぶ小工程の組み合わせにより製品を製造している。そのため,工程内のプロセスパラメータと不良カテゴリーとの間で,MT法を適用,解析し,プロセスステップ内の不良原因工程を特定したい。複数因子が重なって発生している不良も多く,その中で長らく原因特定できなかったSVD(Supply Voltage Detector)不良をターゲットに量産品の工程内パラメータを集めて解析を行った。不良率でなく,電圧とばらつきを予測する方がよく,真値の定義が重要である。一般的には製造条件をデータにする場合が多いと思うが,製造条件をデータにしなかった理由について議論が行われた。

⑤ 「ルームエアコン室内機の風経路パラメータ設計の研究」(ダイキン工業 北川剛):家庭用ルームエアコンの室内機において,背反事項である風量と送風音が同時に目標を満足する風経路を設計したい。設計者は開発時,いつも風量優先か,送風音優先かで悩んでいる。ファンの回転数と風量,回転数と送風音とし,風量は大きい方がよく,送風音は小さい方がよいとして,機能窓のSN比による解析を行った。送風音は音圧データでは駄目で,パスカルでやらないといけない。ファンモータの消費電力を測ればよいのではないか。またファンの回転数とモータの回転数の比例式ではどうか。シミュレーションは考えなかったのか等の指摘があり,議論が行われた。

(ダイハツ 清水 豊 記)

 

9月4日に第126回研究会を実施した。

(1)勉強会

① 「スキャニングソナー受信アンプチャンネル間偏差の抑制(その2)」(古野電気 小河慎二):GAINと位相の2つの機能を解析し,最適条件を算出したが再現性が良くなかった。その対策について中心周波数を合わせ込んで標準SN比で解析する方法とインパルス応答を標準SN比で解析する方法等について検討した。

② 「高速マシニングセンタの加工条件の評価に関する研究(松浦機械製作所)」(三菱マテリアル神戸ツールズ 原田孝):本事例は加工条件の最適化を消費電力と切削除去量で評価しようとしたが,多くのデータが破損等で欠測したため,加工結果を5段階評価によって行った事例であるが,5段階評価を加工の程度,電力の状況および切削量の3つの評価項目からSN比を算出しているが,なぜ3つの評価項目で行う必要があるのか。また,電力量での解析をあきらめているが,データを見る限り十分解析できそうな波形であることから電力で評価を行うべきではないか。その場合の注意点等について議論が行われた。

(2) グループ検討会:4グループに分かれてメンバーのテーマについて検討が行われた。その中から次のテーマについて全体討議を行った。

「ビデオ用のゴムロール回転トルクの安定性を改善したい。ゴムロール表面のクラックを防止したい。どんな実験がよいか。」(ヤマウチ 加藤敦士):回転トルクの安定性についてはテストピースのヒートサイクルで,初期値,加熱時,加熱後の寸法変化を評価すべきで,クラックの防止についてはテストピースに振動を加え,電気抵抗の過渡応答性を評価すべきとのアドバイスが行われた。

(村田機械 荘所義弘 記)

 

8月9日に田口玄一氏を招聘して第125回研究会を実施した。

(1)田口玄一氏の講演:「TS法による素質の探索法」(標準化と品質管理,Vol.57,No.6)を資料として,TS法はMTシステムの中で逆行列を計算できない場合のパターン認識の方法であること,TS法では項目をある順序に並べるが,技術的に重要と思う項目だけに絞らずに手持ちの項目をすべて使うこと,項目の重要性はSN比の大小で出てくるので削除せず,全ての項目で予測,診断するのが大切であること,やむを得ず項目選択する場合は慎重に実施すべきであること,単位空間は目的に対して均一で多量なデータを有する真中の群を使うことなどについて解説された。

(2)事例相談

①「実験機運転条件と色相変化について」,住友ダウ,岡田耕治:プラスティック製品が量産,顧客先における加工条件で着色する問題を実験機レベルで再現させ解決するための実験計画に関する事例。スケールアップ問題におけるノイズの検討や,着色に関連する本質的な物性値評価の検討などについて論議が交わされた。田口氏より,顧客先では製品全体が必ず着色することから,機能のばらつきではなく外観の不良問題であり,精度良く測定するには熱量などを大きくして着色しない製造条件を見つければ良いなどのアドバイスがあった。

②「スキャニングソナー受信アンプチャンネル間偏差の抑制」,古野電気,小河慎二:多チャンネル360度方向の海底・海中探査装置の受信アンプのGain,位相についてシミュレーションを用いた評価方法に関する事例。田口氏より,いくつかの周波数について位相とGainを別々に計算し,位相とGainそれぞれについて理想の位相,理想のGainに近づけることを目指すべきである。どのGainでも位相差が同じこと,一方,どの位相差でもGainが同じに出ることが望ましい。ノイズはGainの正負,位相の正負の4つの組合せを設定することが望ましいなどのアドバイスがあった。

③「応力解析による塑性変形の最適化」,シマノ,太田勝之:自転車部品の軽量化,高剛性化を目指した成型技術のシミュレーションを用いた評価に関する事例。解析データを変形量のMAXとMIN値から特定の箇所の変形量に変更することが再現性の改善につながるなど議論が交わされた。田口氏より,応力集中しそうな箇所の変形量を評価する際に,応力の方向が重要となる。これは位相の問題と同等で,成型途中の状態と最終状態のベクトルデータを評価すべきなどのアドバイスがあった。

(松下電器(株)山口新吾 記)

 

7月9日に第124回研究会を実施した。

(1)勉強会

①「水墨画の誰でも描ける練習法の開発における技能の技術化と品質工学的製品評価」,リサーチデザイン研究所,平野正夫:水墨画をうまく描けない原因を調べ,ノイズの影響を受けない,ノイズに強くなる練習方法を考えた。ノイズとしては湿度が最大。紙が湿っていても安定した濃淡,グラデーションを描けることが基本機能である。安定した濃淡が描けるようになったら(基本機能を改善できれば),あとは少しだけ味付けとしてのニジミを作る。これはチューニングのテクニックである。水墨画も品質工学と同じ考え方ができる。すなわち,味付けばかりの絵では面白くなく,しっかりした基本機能を身につける事が重要である。

②「シミュレーション実験による射出成型品の安定性評価(品質工学会誌Vol.12,No.3)について」,ITEQ,中野恵司:成形品の寸法精度を問題にすると,樹脂を流し込む工程から冷却工程まで,すべての状態を調べなければならない。シミュレーション解析内容で表現すると,樹脂流動解析→保圧解析→冷却解析→そり解析の4つの解析が必要となり,かなり大変である。成形の安定性を研究するなら,流し込む樹脂の動きが安定すればよく,さまざまなノイズ条件での各部の樹脂の流れ方を研究する(樹脂流動解析での安定性評価)だけでよいと思う。

(2)グループ検討会:4グループに分かれ,グループ検討会を実施した。その中から次のテーマについて全体討議を行った。

①「一つのシステムに多くの要求がある場合の調整についての相談」,松下東芝ディスプレイズ,佐山豊:多くの要求は品質特性であることが多く,品質特性間で矛盾が起こり,調整しきれないと思う。まずは基本機能を考えて,一つの計測特性で評価することを考えるべき。最終的な状態や形状を見るのではなく,シミュレーションが可能となっている最初の部分だけで解析しても良いのではないか。その方が研究しやすく,基本機能も考えやすい等の意見があった。

②「樹脂材料のスケールアップの検討」,住友ダウ,岡田耕治:樹脂の生産装置をスケールアップすると,特性値が変化するが,これを安定化させたい。スケールアップに相当するノイズの選定と,信号因子,制御因子を考え,パラメータ設計すべきである。特性値は客先の要求で変化させる必要があるので,安定化設計後に,調整できる因子も抽出する2段階設計が必要。スケールアップ時のノイズとして,何を利用するかがポイントなどの意見があった。

(コニカミノルタ 芝野広志 記)

 

6月5日に第123回研究会を実施した。

勉強会

①:「計算シミュレーションによる工学部品の許容差設計((株)日立製作所 日座和典,谷津雅彦)」,高木正和(タツタ電線(株)):

品質特性に影響のない因子の公差を緩めることによりコスト低減を図ったとしているが,公差を緩める前と後でばらつきを比較すべきではないか。シミュレーションで終わらず実際の作業による確認まで進めて欲しかった。

品質工学研究研究会(QRG)出席にあたっての所感(原和彦顧問):

血液の流速を測定する医療機器の改善テーマで,熟練した検者の作った期待値と一致することをもって改善度を判断する事例があった。必ずしも熟練した検者の作成した波形が理想波形とは限らないので,この波形を目標値として評価するのは疑問が残る。最近,標準SN比が多く使われる傾向にある。標準SN比で何をN0の条件にするかよく検討する必要がある。

下記のテーマのグループ討議をおこなった。

Aグループ「リチウム電池の充放電特性評価」「ゴム製品の劣化評価」,Bグループ「シミュレーションでの水準幅の取り方」「鉄粉成形機の基本機能評価」,Cグループ「田植機の植付け深さ評価」「ヒステリスのある現象の解析方法」

全体討議:

「歯車歯形精度の検査方法」,原田孝氏(三菱マテリアル神戸ツールズ(株)):歯車歯形精度を評価する方法について討議した。理想形状からのズレ量を波形としてとらえ,フーリエ変換して評価する。理想形状からのズレを測定距離で積分して評価する。新しい評価指標と従来の検査結果との突合せにより検査合格値を設定する。などの意見があった。

(ヤンマー(株) 残間茂雄 記)

 

5月15日に田口玄一氏を招聘して第122回研究会を実施した

田口氏の講演:

「スポーツ能力の品質工学」(標準化と品質管理Vol.57,No.5)を資料として講演された。スポーツの評価というのは,人間はDNAで決まっているので,設計できない。しかし,素質のある人,オリンピックで勝てる人を予測することはできる。その方法について解説され,ゴルフの機能を取り上げ,2次元平面での位置の問題で,距離(エネルギー)と方向(エネルギーに無関係)に分けて考える。これは電子回路の複素平面と同じである。また,第二次産業革命は,インフォメーション・テクノロジー(画像,音声,臭い,味の評価)であり,その専門家は技術屋ではない。技術的な画像や音声に関して,画像作成に関しては評価技術が確立してきたが,他の音声認識などの評価技術は遅れていることを指摘された。

事例相談

①「OA機器による照明ちらつきのMTS評価」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株) 芝野広志):OA機器の節電モードの際に,室内照明の蛍光灯におけるちらつき現象の判定精度を上げるためにMTS法で数値評価を行った。項目は,評価者,制御条件,光の特性値などを用いたが,多重共線性の問題があるのでマルチMTS法を用いた。その結果,高い判定精度が得られた。今年の秋に(株)オーケンから発売予定のソフトでは多重共線性の問題が解決されており,今回のような相関の高い項目が含まれた場合でも解析できるようになるとのことである。

②「トナー規制条件の最適化」(村田機械(株) 荘所義弘):ファクシミリにおいて,初期に発生する画像ムラの改善で,トナー層厚を一定にする規制部に着目し,L9実験により短期間で大きな改良成果を得た内容が報告された。それに対し,設計問題であれば画像の評価は,カメラ,テレビ,コピー,FAX等はすべて同じテストで良く,50%の濃度にする光量を計測することが勧められた。

③「光ファイバ接続部の強度評価」(タツタ電線(株) 片山貴智):光ファイバカプラのヒートサイクルによる断線率を改善するために,光の伝達を機能と考え,入力光に対する出力光での評価で,制御因子は製造条件,誤差因子は温度で解析した事例について発表があった。それに対し,L18実験の半分程度壊れるくらいの誤差因子を与えるのがよい。誤差因子の選定は重要でヒートサイクルだけでなく機械的な負荷も与えたほうがよいとのアドバイスがあった。

(シマノ 太田勝之 記)

 

4月2日に第121回研究会を実施した。

勉強会

①「衝突噴流を用いたCPU冷却システムの評価方法と最適設計(品質工学Vol.10 No.6)」(三菱重工 高濱正幸):本事例を通して評価特性,標示因子がある場合の解析式,確認実験のやり方等を討議した。

②「開発フェーズに即した電子写真現像器の設計効率向上(品質工学Vol.11 No.4)」(コニカミノルタ 寺坂佳久):本事例を通してサブシステム評価の必要性,全体システム評価時の考え方等を討議した。

グループ検討会:3グループに分かれて,メンバーが持ってきたテーマの議論を行った。その中から次のテーマについて全体討議を行った。

①「OA機器使用時の蛍光灯のちらつき評価」(コニカミノルタ 芝野広志):前回に引き続き,官能評価である蛍光灯のちらつきをMT法で評価した結果を検討して,マルチを用いて項目を人間系(評価者),制御系,結果系に分けて単位空間を考える。オーケンのMT法の計算ソフトでは,単位空間距離の平均値が1付近であることが必要で,1近辺にならないときは多重共線性の影響が出ているので,それ以上の解析は無駄であることが報告された。

②「MT法による工程不良の原因特定はどうすれば良いか」(三洋電気 神谷一徳):ロット毎の工程データを用いて特性値の改善方向を探したい。そのために特性値の平均値と目標値が大きくずれている場合の単位空間はどう考えたらよいかについて相談があった。本事例について,目標値近傍とか良品とか中心値付近を単位空間と考えればよいが,平均値と目標値があまりにもずれている場合は実験の前に考え直す方がよいとのアドバイスが行われた。

③「光ファイバー接続部の強度評価」(タツタ電線 高木正和):光ファイバーカプラ傷等による破断状況をスクリーニングによって検査を行って出荷しているが,市場クレームが発生している。そのため,ロバスト設計によって品質を改善すれば市場での寿命を保証できるか。また,どんなスクリーニングをすれば市場品質を保証できるかとの質問があった。本事例について,スクリーニングによって市場品質を保証することは困難であり,製品のロバスト性を評価すべきである。本事例の場合,工程の異常によるものか,設計のばらつきによるものかによって対応が異なるのでデータを取って,どういう評価を行うかを検討すべきであるとのアドバイスが行われた。

(村田機械 荘所義弘 記)

 

3月6日に第120回研究会を実施した。

勉強会

①「経営/マネジメントと機能性評価」(ティ・ティ・コンサルタント 竹ヶ鼻俊夫):学会誌Vol.11 No.5に掲載された内容の背景について,車載用の衝突防止装置の開発を例に,新製品開発時の“クレーム未然防止へ品質工学の活用”の考え方やそれに至る経緯の説明があり議論を行った。今までにない画期的な新製品を開発する場合,従来の信頼性工学的な「実証された技術,部品の優先採用や2つ以上のアイテムを同時に変えない」との考え方があり,これらは矛盾する。この矛盾を解決することが創造的な仕事であり,品質工学,ロバスト設計である。クレーム率が高い場合は製造不良(工程不良)を減らせば,市場クレームが減るという傾向が強かったが,工程不良率が下がってくると市場クレームが高くなることも経験している。従来のデザインレビューの考えには限界があり,基本機能確保の考えが必要である。QFDは時間と工数がかかりすぎることから,「品質改善から未然防止」という品質工学の必要性が生まれる。開発設計の効率化のためには,機能性を考えることが必要。従来の信頼性評価方法には評価時間が長い,費用がかかりすぎるなどの問題があり,シミュレーションの使い方(モンテカルロ法)も適切でない場合がある。衝突防止装置の開発に品質工学を使っていたら開発効率は向上し,半分以下の時間と費用で済んだ,と思う。これらをもとに,「製造不良(工程不良)と市場クレームは無関係」,「基本機能をどう定義するかが大事」,「基本機能は技術手段の機能ではなく,計測技術の機能である」,など活発な議論がなされたが,十分議論する時間もとれなかったため別途機会を作りさらに議論を深めることとした。

②「電子写真現像材の評価方法の開発」(富士ゼロックス 櫻井英二):本年6月の大会に発表する論文の内容について検討した。標準SN比計算時のノイズの取り方や,英語表記についてのアドバイスがあった。

グループ検討会:3グループに分かれて,メンバーが持ってきたテーマの議論が行われた。その中から次のテーマについて全体討議を行った。

①「標準SN比の定義式はどれが正しいか」(シマノ 太田勝之):最近,田口氏が標準SN比の定義式をη=10log(2r/Vn)と主張されていることについて,従来のη=10log(Sβ-Ve)/Vnから変更されたということか,分子の(Sβ-Ve)/2r≒1になることから(2r/Vn)となったのかについて議論が行われた。

②「OA機器の省エネ制御による照明ちらつきのMTS解析」(コニカミノルタ 芝野広志):OA機器を導入したことによって生ずる室内の蛍光灯のちらつきを,官能評価によるMT法解析を行った結果が報告された。本事例では単位空間距離の平均値が1からかけ離れていることから計算ソフトの問題か,評価する人の目に関する条件が必要ではないか等の議論が行われた。  

(コニカミノルタ 平野雅康 記)

 

2月6日に第119回研究会を実施した。

田口玄一氏の講演:人間による判断の信頼性評価について説明がなされ た。まず,信号の水準の真値が明らかな例として通信による音声の明瞭度評価の事例を取り上げ,ホワイトノイズを加え,誤りが50%前後になるようなデータを取得する試験を行うのが良く,さらに,音の種類ごとに明瞭度が異なるため,それぞれの単音ごとにSN比を算出することが示された。また,真値が不明な例として洋服の風合いの判断事例を取り上げ,複数の評価者による感応評価では,評価者ごとにSN比を算出してデータの重みづけを行うことで,データの精度が上がることが示された。

DVD上映:1998年1月にNHK「おはよう日本」で放送された田口玄一氏の米国自動車殿堂入りのニュースを上映。

事例相談

 「ガスタービン翼の冷却性能評価」(三菱重工 高濱正幸):ガスタービン翼のマルチホール冷却の事例で,できるだけ少ない冷却空気で効率良く冷却を行うことを目的とした。L18でシミュレーション実験を実施したが,SN比と感度が相反する結果となった。田口氏より,誤差因子にしたガス温度は,エネルギーの流れを考えると誤差による影響が小さくなる条件が存在するとは考えにくいため標示因子にし,どの温度でも熱交換率が良くなる条件を選んだ方がよいとのアド

バイスがあった。

 「電子写真現像剤の評価方法」(富士ゼロックス 櫻井英二):超高速連帳プリンタ用トナーのキャリア性能評価方法に関する事例。現像剤の理想機能として帯電性と現像性を同時評価する方法を考案し,標準SN比と動的機能窓法を適用した。最適条件では,SN比,感度の再現性がよく,従来の品質特性の結果とも合致していた。標準SN比の算出にあたり,異なった印加電圧ごとにN0を取るようアドバイスがあった。

 「着色アルマイトの色の評価」(シマノ 太田勝之):アルミ表面に形成した多孔質のアルマイト層に金属を析出させて着色した製品に対し,耐候性評価で色の変化が少ない着色方法を検討した。色の評価方法として,LAB表色系等を使用して実験を行ったが,再現性がなかった。データをオメガ変換する,着色金属だけで評価する,評価装置を変更する,材料の劣化問題なので周波数で評価する等のアドバイスがあった。  

(神戸製鋼 原宣宏 記)

 

1月10日に総会を行った後,第118回研究会を実施した。

総会:芝野幹事長より,昨年はシンポジウムをはじめ活発な活動ができた。本年度も関西でのシンポジウム開催等を行い研究会をさらに活性化していきたい。他の研究会にない新しい取り組みの提案を会員の皆様にお願いするとの挨拶があり,2003年度の活動報告,会計報告と2004年度の活動計画,予算計画および新幹事が承認された。

原顧問の講演「今なぜ品質工学か」:H2A型ロケットの打ち上げ失敗に始まり,技術者は言い訳のみで,責任を取らない。設計変更の是非をどのように評価し,採用を決定したのか。ノイズという概念をまったく考えていない。日本のものづくりは「レスポンスの研究」が主流で「ロバストネスの研究」が不足している。日本の企業では,製品の「品質目標項目」が決まっていて,それぞれの試験項目がJIS規格化されている場合が多いのに,評価の仕方は自由である。規格を

決めるのではなく,規格の決め方,評価の仕方を決めるべきである。最近,品質工学の本質を忘れていないか。「社会的損失を最小にする」ことが原点であったはず。「機能性評価」のみが品質工学ではない。社会全体が細分された部分ごとに分かれて担当するようになって,全体が見えず,部分しか見えていない。上っ面だけで品質工学をとらえていないかをよく考えてみてほしいとの講演が行われた。

グループディスカッション:3グループに分かれて実施した。各グループで検討された主なテーマは「ガスタービン翼の冷却性能評価」(三菱重工 高濱正幸),「電子写真現像剤の評価方法」(富士ゼロックス 櫻井英二),「着色アルマイトの色の評価方法」(シマノ 太田勝之)であったが,時間の都合で全体討議は行わなかった。

(ダイハツ 清水豊 記)

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