関西品質工学研究会から、従来のSN比の問題点を解決するために「エネルギー比型」と呼ぶSN比を提案した。 品質工学会誌 2010年vol.18 No.4 に掲載
まさに、技術の経済評価指標である。
田口の言う「2乗が経済に比例する特性値をとるべき」(「品質工学の数理」のほか、多くの著書)
エネルギーは経済に比例することが多いため、2乗がエネルギーに比例する特性値を選ぶことが推奨される。
平方和=金額となる特性値を選ぶということ。
SN比は経済的な利益/損失の比率の式と理解できる。
全平方和は、ST=Sm+Seと分解されます。Smは有効成分(利益)Seは有害成分(損失)なので、
その比を取り、Sm/Se。比率は加法性のためオメガ変換として、10Log(Sm/Se) →10log(m^2/(Se/n))データnで補正
統計とは無関係な、技術の経済的な評価である。
メリットは多く、
1.比較の条件(データ数や信号)が揃わなくても比較できる
2.数式が単純で理解しやすい
3.無次元となり、SN比の値が意味を持つ。
0dbでは有効成分と有害成分が等しい状態。
例えば30dbや40dbの実験データではノイズの与え方が不十分とわかる。
基本的な事業の評価の方法として、損益計算がある。お金のやり取りを収益と費用に分け、
1.利益金額(=収益-費用)
会社の重要な機能は利益金額の最大化であり、重要な総合指標である。
2.利益率(=利益/費用)
B/CまたはP/Lとも言われるように、利益を出すための効率の分析指標に使われる
2倍の費用をかけると2倍の収益が得られるような変動費に対しては有効。
3.費用金額
固定費のように、増減が収益に大きな影響を与えないとわかっている場合は費用金額の最小化が目標値としても設定しやすく、効果が見えやすい。
技術の良さの評価も同様で、性能向上とそれに見合う費用かどうかで判断される。
得られた性能データは2乗和の分解を行うことで、有効成分Sm(収益)と有害成分Se(費用)に分けられる。
1.利益金額(=収益-費用)
望大特性がこれに当たり、有効成分Sm-有害成分Seを計算する。負値もとり得るので対数にしない。
2.利益率(=利益/費用)
望目特性がこれに当たり、有効成分/有害成分を計算する。
比率データなのでオメガ変換により10log(Sm/Se)を用いる。
3.費用金額
バラツキの改善だけが目的の場合はゼロ望目特性を用いる
分解後のSeだけを評価する。データが非負でゼロ近傍となりやすいので対数-10log(Se)を用いる。
4.費用金額
望小特性がこれに当たり、有害項目を評価したデータの場合、有害成分St(支出)を評価する。これもデータが非負でゼロ近傍となりやすいので対数-10log(St)を用いる。
動特性の場合:
ゼロ点比例のSN比: ηE=10log(Sβ/(St-Sβ))
従来のゼロ点比例SN比(21世紀型)
η=10log((Sβ-Ve)/VN)
基準点比例のSN比:
ηE=10log(R^2/(1-R^2))
平均値を原点とした場合で、ピアソンの積率相関係数Rを使った式で表される
従来のSN比の問題点:
従来の望目特性SN比 η=10log((Sm-Ve)/n/Ve)
・分子はnで補正しているが、分母はn-1で補正のため、データ数が異なると比較できない。
データA: 10,20 では、6.0db となるが、繰り返しを増やしただけの同品質のデータB:10,10,20,20 では、8.1dbと大きく変わってしまう
・Sm-Veが負となる場合は計算ができない
例えば N1=0,N2=10では計算不能
・繰り返し数や信号数が異なったり、欠足データが有った場合など、比較条件間でデータ数が異なると比較できない
・信号の値が異なった場合は比較できない :競合品との比較では、信号を揃えられないことは多い
・Sβ-Veが負となる場合は計算ができない
・分母、分子をそれぞれ自由度n-1、1で割っており、分散比(F値)の形で、
F値と同様にnにより意味は変化し、F分布による判定が必要となる。
従来SN比での条件を揃える必要性:
従来のSN比では信号やデータ数などの条件を揃えなければ比較ができない。
そのような注意喚起もされておらず、揃えずに使っている事例も少なくない。
揃っている場合は「エネルギー比型」と同じ結果であり、矛盾もない。