SN比による評価
品質工学ではノイズに対する影響を減らす(ロバストにする)ための評価にSN比(Signal/Noise)を用いる。
製品とは、お客様の目的のために機能を付加した人工物で、お客様はその機能に対しお金を支払っている。
機能は、お客様の使用条件であるさまざまな入力(信号)と出力の関係で評価される。
その関係がノイズに対して変化する度合いをSN比(Signal/Noise)という尺度で評価する。
SN比とは、品質工学で技術評価に用いられる尺度
平均(お客様のほしいもの)とバラツキ(お客様のほしくないもの)の比
mは平均値、σは標準偏差
品質工学では、2段階設計が推奨される。
第1ステップ:ノイズに対する安定性の改善 →SN比を最大
第2ステップ:平均値を目標にあわせる →感度の調整
このノイズに対する安定性を評価する尺度がSN比
技術には目的があり、その目的はさまざまであるから、SN比も目的により選択する。
静特性 お客様のさまざまな使用条件に対し目標値が1点の場合
望目特性:寸法など目標値がある場合 (平均とバラツキが相対的に変化する場合) 平均は後で調整
望小特性:非負で小さければ小さいほど良い特性 (ひずみやそり、騒音など)
バラツキと平均値を同時に評価する
望大特性:非負で大きければ大きいほど良い特性 (強度や収率など)
バラツキと平均値を同時に評価する
ゼロ望目特性:正負がありバラツキを小さくしたい (座標や振動など、平均値とバラツキが独立している場合) 平均は後で調整
動特性 お客様のさまざまな使用条件に対し目標値が変化する場合。制御など。
ブレーキやアクセル、ハンドルなどでの入力に対し、それに応じた出力を期待する場合
その関係がノイズにより変化しないことが望ましい
ゼロ点比例式:入力(信号M)に対し出力yが比例することが望ましい特性
原点を通る直線からのバラツキを評価する
y=βM (βは直線の傾き)
標準SN比:入力(信号)に対し出力が比例するとは限らない特性 (非線形)
入力(信号)ごとに、目標値があり非線形となる場合
計算式は、有益な成分と有害な成分の定義は技術の目的により異なる
損失関数から定義されるように、お客様の目的を表す特性値でのデータは平方和の分解を行うことで、お客様にとって有益な成分と有害な成分、どちらでもない成分に分けられる。
ここで重要なのは「2乗が経済に比例する特性値をとる」ということ。
目標からの2乗に損失、利益が比例することから、有益な成分/有害な成分と比を取り、加法性のためにオメガ変換した形がSN比である。
エネルギーは経済に比例する場合が多いため、2乗がエネルギーの単位となるような特性値を選ぶことがコツとなる。
この経済的な指標とも言えるSN比を用いることで、パラメータ設計における最適条件の決定や予測精度の経済的な判定が行えるようになるなど用途は広い。